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森の花ごよみ
森の花ごよみ     春の章(4月〜6月)
2011.06.18

藻岩山の春紅葉
 四月に入ると、雪に覆われていた山麓部の木々の根方の雪間が日ごとに広がり、それまで堅く閉じていた枝先の芽が動きだします。多様な落葉樹が混交している藻岩の森は、それぞれの芽吹きの色が浮かびでます。北国の森ならではの多彩な春紅葉の一時です。中でも周りの木々に先駆けて、藻岩の森の主カツラが紅色の花を開き、その存在をアッピールします。
エゾエンゴサク(蝦夷延胡索) *花期 4月中旬〜下旬

ケシ科の小型多年草
 雪どけの四月の半ば、出番を待ちかねていたかのように山麓の登山道脇から早春花が次々に咲きだします。その先頭をきってエゾエンゴサクが青紫の微妙な色合いの小さな筒状花を下向きに咲かせます。なかには白の色変わりも混じり、春の訪れを告げています。
キタコブシ(北辛夷) *花期 4月中旬〜下旬

モクレン科の落葉高木
 まだ冬姿の木が多い森の中で、キタコブシの大きな蕾(つぼみ)が割れて純白の花びらが開き、時折春風に揺れてあたかも白鳥のように舞います。その美しい姿も、美人薄命を地でいくように数日にして萎えてしまいます。待っていたかのように、若葉が日ごとに緑を濃くし、藻岩の森は春本番を迎えます。

ニリンソウ(二輪草) *花期 4月下旬〜6月中旬

キンポウゲ科の小型多年草
 葉の間から伸びた2本の柄の先に、白い5〜6枚の花びら(がく片)を開きます。その真ん中に雌しべと多数の雄しべを備えている標準的なつくりの両性花です。早春に山麓から咲き始め、六月半ばに中腹部の尾根筋にまで登って咲いている息の長い花です。根茎を横に伸ばして群をつくり、地味ながら力強さが感じられる庶民的な花です。
ヒトリシズカ(一人静) *花期 4月下旬〜5月上旬

センリョウ科の小型多年草
 茎頂に4枚の葉に抱かれるように1本の花穂を立てます。花といっても花びらもがく片も欠き、白い糸状の雄しべと雌しべだけの変形的な花です。その和名は、彼の源義経の愛人、静御前の舞姿に見立てつけられたとのことです。しかし、実際には多数の花が群れをなしていて、とても一人静の雰囲気ではないとの異論も聞かれますが、理屈はともかく、その可憐な姿は私たちの目を和ませてくれる早春花です。
フデリンドウ(筆竜胆) *花期 5月下旬〜6月上旬

リンドウ科の小型多年草
 例年、藻岩山の日(5月31日)に合わせるかのように、筆先のような蕾がほころび青紫の花を開きます。道脇の藪間に点在し、陽差しを受けてやおら開くので、出会えた方はラッキーです。漢字名の「竜胆」は、この根を噛むと熊の胆よりも苦いので「竜の胆のようだ」に由来するとのことですが、花のイメージには合わない名ですね。
シラネアオイ(白根葵) *5月下旬〜6月上旬

シラネアオイ科の中型多年草
 新緑がまぶしい藻岩の森のあちこちに、シラネアオイが姿を現わし、夏へと季節の移ろいを知らされます。日本に自生する山野草のなかでは、その気品ある花の人気度は、5本の指に入ることは確かです。ちなみに花ことばも「優美」です。シラネアオイの名は日光の白根山に多いことに由来しているそうですが、自生地の各地で希少種への運命をたどっているとのことです。
ノビネチドリ(延根千鳥) *5月下旬〜6月上旬

ラン科の中型多年草
 登山道の中腹部、馬の背付近の林縁に、紅紫色の小花をたくさん着けた花穂(総状花序)を立てています。ラン科の花は、たとえば胡蝶蘭のようにその優美な容姿がおおくのファンを惹きつけていますが、ノビネチドリはれっきとした野生のランです。全国版の図鑑では、高山性とされていますが、藻岩山では、登山口から10数分の中腹部で、千鳥に見立てられたノビネチドリが見られます。
マイズルソウ(舞鶴草) *花期 5月下旬〜6月上旬

ユリ科の小型多年草
山麓から馬の背付近までの路傍のところどころに小さな群れがみられます。高さ10〜20cmほどの低い茎を立て、途中に2枚のハート形の葉を広げ、その先に白い6弁の小花を集めています。うっかり見逃してしまいそうな地味なマイズルソウですが、その姿を鶴の舞いに見立てた先人の優しい心情が、カメラのレンズをとおして感じられた五月晴れの藻岩山でした。
ホオノキ(朴木) *6月上旬〜下旬

        モクレン科の落葉高木
 藻岩山の原生林に根を降ろしているカツラ、ハルニレ、シナノキ、カエデ類などの落葉高木たちは、20メートルを超す背丈のため、枝先の花に目が届きません。その中でホオノキは、直径が15センチもある大輪の花を咲かせ目立っています。真ん中の花軸にはたくさんの雌しべが、その下にはツートンカラーの雄しべが取り巻いています。開花した初日には、雌しべが熟し2日目に閉じてしまい、一方の雄しべが熟します。つまりホオノキの花は、近親結婚を避けるための技を身に着けているのです。受粉を済ませ役目を終えた花は、早々に散り果て、森の花ごよみが夏の章へと移ろいます。
サイハイラン(采配蘭) *花期 6月中旬〜下旬

ラン科の中型多年草
雪どけの地面に笹に似た2枚の葉がへばりついていました。もしかしてサイハイランの葉では?と見守っていたところ、六月の半ば、予想した通り葉の根元から2本のサイハイラがその全容をみせました。やや薄暗い場所を好むようで、登山道の脇の古い根株の陰に隠れて立っていました。同じ姿のモイワランには葉がないので識別されると図鑑にありますが、同じ個体が、年によって葉をつけるとの観察結果も報告されています。

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