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森の花ごよみ
森の花ごよみ 秋の章(9月〜10月)   
2011.09.06

9月1日の登山道(慈恵会病院前コース)
市街地の日中の最高気温は平年値を7℃も上回る32℃の9月1日、登山道には原始林の冷気を求めて藻岩山ファンが続きました。そんな道の両サイドには、キク科の花が目立ち、秋の気配が漂っていました。春以来、観察できた花は60種余を数えました。これらの山草は、クマイザサが密生する林床と、踏み固められた登山道との僅かな空間に木漏れ陽を受けて根を降ろしています。この中には、オオアワダチソウやヒメジョンなどの外来種も目立つようになりその旺盛な繁殖力がやや気になるところです。中腹の馬の背に立つイタヤカエデの梢を渡る風のざわめきは、秋への移ろいを感じさせ、本欄の花ごよみは、秋の色を濃くする木の葉や果実にその役目をバトンタッチしようとしていました。
林縁を飾る花たち *花期 9月上旬

エゾトリカブト;キンポウゲ科の中型多年草
 キツリフネ;ツリフネソウ科の中型1年草
 ミズヒキ;タデ科の中型多年草
 ノブキ;キク科の中型多年草
中腹部の登山道脇の草むらに、夏から秋へと季節をつなぐ花がそれぞれの個性を競うように咲いていました。いまが花盛りのエゾトリカブト、キツリフネ、ミズヒキ、画面の左下にはすでに咲き終えて実(痩果)をつけたノブキの株も見られます。いずれも山地の林縁に住みついている在来種で、藻岩の森に季節の変わりめの一時に姿をみせる多様な花たちの集まりです。
ミミコウモリ(耳蝙蝠) *花期 8下旬〜9月上旬

キク科の中型多年草
登山道入り口から間もない道脇に小さな白い小花を幾つもつけて立っているミミコウモリが姿を見せます。それぞれの小花は、筒状花の集まりで、庭先に見るキクの花とは縁遠い感じですが、このキクの個性は、花と対照的に大きな葉にあります。札幌ではあまりその姿をみれませんが、空飛ぶねずみの仲間の蝙蝠(こうもり)の姿に由来しているとのことです。
サラシナショウマ(晒菜升麻) *花期 9月初旬〜下旬)

キンポウゲ科の大型多年草
登山道ばたの所々の草むらから細長いブラシのような花の穂を伸ばし、サラシナショウマが点在しています。和名の升麻は、生薬のとして用いられ、また、葉は晒して食用にされていたことに由来するとのことです。
本州の高原では、大群をなして花ブラシを立てる姿が見れますが、藻岩山で少数派の花のようです。ショウマの名がつく山草には、トリアシショウマ(ユキノシタ科)、ヤマブキショウマ(バラ科)などなどか図鑑に載っていますが、それぞれが別の科に属して、この時期に本種だけが花をつける秋花です。ちなみに花ことばは、「雰囲気のよい人」ですが?

ツルニンジン(蔓人参) *花期 9月初旬〜下旬

キキョウ科のつる性多年草
 入り口からの谷沿いの登山道が突然開け、馬の背と呼ばれている峰道に辿りつく。乾燥性の植生が目立ち、林床に繁茂するクマイザサが寄せて道を狭くする。そんなササに絡みづんぐりした釣鐘状の花冠を下げているツリガネニンジンが目にとまりました。5裂し反り返った花冠の内側には紫褐色の微妙な模様が、その中心に鮮黄色の花粉をつけた雄しべが覗かれます。
 その名は、根が高貴薬とされた朝鮮人参に似ていることに由来するとのこと。花冠の外側は薄い緑色の保護色でうっかり見逃してしまいそうですが、藻岩の森で秋を体感させてくれる文字どおりの異色の花です。
エゾゴマナ(蝦夷胡麻菜)*花期 9月中

キク科の大型多年草
 馬の背を行くと、人の背丈を越える茎の先々に房状の白い花をにつけた花の壁が続きます。花の一つ一つは2cmほどで、真ん中に黄色、外側を白い花びらが取り巻く典型的な菊姿です。図鑑によると、本州の山野に広く自生しているゴマナと呼ばれる野生種の頭に産地名のエゾ(北海道)が付されている菊でした。この2種はどこがどう違うのだろうか?そのゴマナの名は、葉が胡麻の葉に似ているからだとのこと。まだ夏の名残りを残す青空をバックにスマートな姿で歓迎してくれました。
アキノキリンソウ(秋の麒鱗草)9月中旬〜下旬

キク科の中型多年草
山頂近くのダケカンバ林の登山道を喘ぎあえぎ登る目の下に黄金色の小花の穂を立てているアキノキリンソウが目に映りました。この花は別名アワダチソウとも呼ばれ、北海道から九州に至る各地の山野に見られる秋告げ花として知名度の高い野生種です。北国も標高500mの厳しい環境のこの地で出会うとは、思わず目を疑うほどでした。  近年、各地の自生地では、よそ者のセイダカアワダチソウに押されて、影がうすくなっています。藻岩の原始林でもその二の舞にならなければとの心配が、思い過ごしであれば幸いですが。
森の秋化粧 *10月

10月に入ると高山の紅葉や初冠雪が報じられ、札幌市内でも街路樹が色づき秋のムードが日々深まっています。当の藻岩山では? さっぽろ文庫12には10月7日には中腹以上に紅葉が小斑点状に見られはじめ、16日にはイタヤ類の紅葉が全面に広り、25日には山麓部にも紅葉が進み11月始めには山麓の広葉樹も落葉しはじめる(観察年不明)と記載されています。
 こう葉は、夜間の気温が5℃前後になると進み、日中には20℃となるような昼夜の気温格差が大きいと一段と進むと言われています。ちなみに札幌市では、10月9日は晴天で、夜間の最低気温は7.7℃、日中気温は20℃まで上がり、森の秋化粧が日々鮮やかさをましていくと思われます。
*写真は10月12日の藻岩山の東斜面
  天気;曇り 気温;最低6.3℃ 最高16.4℃
カツラ(桂)の黄葉  *黄葉期10月中旬

カツラ科の落葉高木
紅葉(こうよう)と言っても、樹種によって紅葉、黄葉、褐葉など個性的で、様々の落葉樹が混交している藻岩の森では、多彩な色合いの模様が浮かびます。中でも早春の森で春紅葉の主役を演じたカツラが、紅葉期の本番には、他の木々に先駆けて丸型の葉を黄金色に染め、秋空にひと際鮮やかに輝きます。
 黄葉は、秋になると葉の中の葉緑素が分解し、黄色の色素のカロチノイドが残り目立つためと言われています。色づいたカツラの木の周りにほのかな甘い香りが漂っていました。 カツラの名は「香出」の意味とも言われています。藻岩山原始林のカツラは、かつて、遠来のアメリカの植物学者のサージエント博士が名木と褒め称えたとの古事も納得のカツラの黄葉ぶりです。
*10月21日撮影 天気;快晴 気温;最低6.2℃ 最高19.9℃


イタヤカエデ(板屋楓)の黄葉 *黄葉期 10月中旬

カエデ科の落葉高木
藻岩山の原始林では中腹部に多く、山麓部のカツラに引けを取らない黄葉ぶりを見せています。すぐ近くには同じ仲間のベニイタヤも同じように色づい立っていました。どちらの葉も手のひら形で前者は7裂、後者は5裂の違いがあり見分けるポイントとされていますが、黄葉期の今、高い枝に着いている葉よりも路上に散らばっている落葉から両者の区別が容易です。黄葉を愛でながら樹木学の勉強も如何でしょうか。
*10月21日撮影
ハウチワカエデ(羽団扇楓)の紅葉 *紅葉期 10月中旬〜

 カエデ科の落葉亜高木
黄葉系の樹種が多い藻岩山の森では、ハウチワカエデが異色の存在です。写真は日当たりのよい林縁のハウチワカエデの紅葉ぶりです。しかし藻岩山では少数派で、しかも林冠の下に隠れるように立っているものが多く、紅葉(もみじ)の名勝地から外されているようです。
 紅葉の仕組みは、落葉の前の葉に残っている糖分が紅色の色素のアントシアンに変化するためと説明されています。文化面では秋の紅葉狩りが春の花見と共に季節文化として私たちの暮らしに根づいています。
*10月21日撮影

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