森の花ごよみ 夏の章( 8月)
2011.08.05
春紅葉からスタートした森の花ごよみは、早くも8月を迎え、藻岩の森は深緑の梢を渡る夏風に揺れています。暦の上では8月8日に立秋を迎えますが、夏に向けて上昇してきた札幌の気温も、この日を境に徐々に右肩下がりにとなり、程なく朝晩に秋の気配が感じられる候に向かいます。 写真は、春の章に掲げた春紅葉と同じ斜面の8月5日の様子です。
クマツヅラ科の落葉小高木
花の気配の少ない夏の盛り、山麓の林縁に、重なり合う葉の上に、白い花の房を立てている低い木が目立ちます。近づくと、花にはほのかに香り、惹かれてアゲハチョウが乱舞しています。花とは裏腹に、葉には頂けない臭気があり、その名に納得させられます。
花は、咲き始めには雄しべを突き出し(雄性期)、翌日には頭を垂れ、変わって一本の雌しべがピンと直立(雌性期)する。強い子孫を残すためのクサキが演ずる巧みな生への一幕です。
ウコギ科の落葉高木
緑の色があせ始めたお盆明けの藻岩山の斜面に、白い花序を立てている樹冠が散見されます。登山道の入り口付近で天に向かって真立しているお馴染みのウコギ科のハリギリに外ありません。花序は黄緑色の小花が球状に集まったもので、高木の花シーズンの最後を飾り、森に季節の移ろいを告げる花です。肝心の花は遥か頭上に開き、地上からうまく撮れなかったので、円内の花は図鑑から借用したものです。今更ながら個性的な花のつくりに感じ入った次第でした。
キンポウゲ科の中型多年草
上に登場させたハリギリの根元の草むらに青紫色の花をつけたエゾトリカブトが群れていました。その名トリカブトは、舞楽のかぶり物である鳥兜に似ていることに由来した由緒ある野草ですが、反面、強い毒性をもつ危険な野草としてその名を馳せています。
かつては熊の狩猟用の毒矢に根の汁が利用されたとのこと。林床に、ひっそりと咲くこの花が、私たちを悪者扱いにしないで!と訴えているようにも見えた残暑の森での一時でした。
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