自然学習歩道に咲く夏の花
2012.08.19
この春にロープウェイの中腹駅から山頂までを縫う自然学習歩道が開通しました。歩道脇の草むらや樺林の林縁に真夏の陽を受けて、ヤナギランやオオヤマサギソウなどの山草、ノリウツギ、ホザキナナカマドなどの低木、イケマやツルニンジンなどの蔓類の夏花が、訪れる市民の目を楽しませていました。
いずれも疎開された林地に侵入する種類で、今後年を重ねるにつれて遷移する植物相の姿が観察できる貴重な自然学習の場になるものと期待されます。
左;オオヤマサギソウ(大山鷺草) ラン科の中型多年草
歩道脇の岩片の隙間から、茎先に淡い緑色を帯びた花をたくさんつけ、見慣れない1本の茎が直立していました。唇弁形の花や葉のつき方からランの一種と見当つけ、図鑑などを参考にしてようやく本種であると同定しました。本州の各地の高地に分布するとのことですが、藻岩山では希少のランのようです。果たしてここで生き残っていけるのでしょうか。 撮影日;7月29日 天気;晴れ 気温(℃)最高31.2 最低21.4
右;エゾスズラン(蝦夷鈴蘭)
別名を青鈴蘭とも呼ばれ、20cmそこそこの茎の先に緑色の唇弁花を疎らにつけた控え目の姿で道脇の草むらに点在していました。
撮影日;8月7日 天気;晴れ 気温(℃)最高23.3 最低18.2
アカバナ科の大型多年草
歩道のノリ面の草むらから抜け出した茎の先端部に、多数の紅紫色の花をつけ夏空を背景に美しい花姿をみせていました。本種は中部地方の山地の伐採跡地や山火事跡などにいち早く入り込んで群生することで知られていますが、ここ藻岩山の原生林でそのヤナギランと出会うとは驚きでした。
円錐形の花序では、花が下から順に咲き上がり、ちょうどこの日には中間部に達していました。和名からランの一種と誤解しやすいが、花のつき方がランに似ているだけのことで分類上は無関係です。
撮影日;8月5日 天気;曇り 気温(℃);最高24.6 最低20.2
バラ科の落葉低木
春さきに、歩道の中央部付近にナナカマドにそっくりの複葉をつけた低木の群生が目にとまりました。夏を迎えようやく枝の先々から多数の小花を密集した円錐形の花序が立ち、その正体を現しました。
小花は白い5弁の中に多数の雄しべ立て、山地系のホザキナナカマドであることが確認できました。秋にはどんな実を結ぶのでしょうか?
撮影日;8月5日 天気;曇り 気温(℃);最高24.6 最低20.2
ユキノシタ科の落葉低木
ホザキナナカマドと競演するかのように歩道脇に、枝先に大きな円錐花序を立てたノリウツギが夏風にゆれていました。花穂には小さな両性花が多数つき、その周りをアジサイの仲間に特有な飾り花(中性花)が取り巻いています。葉柄のある葉が枝に対生する、葉の形は卵形から楕円形、縁に鋸歯がある、などが見分けのポイントです。藻岩山では林縁などによく観られ、サビタの名で知られているポビュラーな花木です。かって和紙を漉く糊が採られていたので、この和名がつけられたとのことです。
撮影日;7月28日 天気;曇り 気温(℃);最高32.3 最低21.4
キンポウゲ科の大型多年草
お盆過ぎの自然学習歩道では、夏花が咲き終わりススキが穂を立て、秋の気配を濃くしています。そんな林縁の草むらから湾曲した長い花茎を伸ばし、青紫色の烏帽子形の花を密生したエゾトリカブトが姿をみせていました。その華やかな花姿と裏腹に、猛毒草として人間からは恐れらている山草、及び腰で対面する花に、マルハナバチが盛んに花にもぐり込み花粉を運んでいました。毒はマルハナバチには無害で、逆にパートナーシップ(共生)の仲を結ぶという巧みな生き残りの術をみせられた初秋の自然学習歩道でした。
撮影日;8月27日 天気;曇り 気温(℃);最高26.8 最低19.3
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