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森の花ごよみ
森の花ごよみ in 2012 秋の章
2012.10.21

落葉広葉樹林
  前年の10月12日の花ごよみに掲げた東斜面の写真では、黄葉した樹冠がモザイク状に浮かび秋が実感されました。今年は夏から続いた記録的な高温のせいか、紅葉前線の到着が昨年よりも10日前後遅れて藻岩の森もようやく緑が褪せ、黄色に色づき始めました。 四季ごとに多彩な表情を見せる藻岩山、ややもすれば、季節感を失いがちの私たち札幌市民の自然の暦として、自然への思いを目覚めさせてくれます。また、気候の異常な変化を鋭敏に反応し、発信してくれる自然のシグナルでもあります。
  ミュンヘン大橋より10月15日撮影 天気;晴れ 気温(℃)最高16.5 最低10.5
秋衣装を纏う藻岩の森

 落葉広葉樹林のこうよう(紅葉、黄葉) 
 木々の紅葉は、秋まで働き続けてきた葉の中の葉緑素(クロロフィル)が、落葉する前に赤(アントシアン)や黄色(カロチノイド)などの色素と入れ替わる落葉樹の冬支度と捉えられています。日中と夜間の温度差が大きいほど鮮やか色づくといわれています。また、樹種によって葉に含まれている色素が違い、多くの落葉樹が混交す藻岩の森ではそれぞれの木々が個性的な秋衣装を纏います。10月の下旬、ようやく気温がこの時期らしい低温になり、樹海の秋色が進み、大小のまだら模様が浮かびでて、私たち市民に冬の備えを促しています。
  ミュンヘン大橋より10月27日撮影 天気;晴れ 気温(℃)最高16.4 最低4.0
ハウチワカエデ(羽団扇楓)の紅葉

カエデ科の落葉高木
  秋のこうよう(紅葉、黄葉)を代表する木と言えば、モミジかカエデの名前が思い浮かびます。これらの樹種の名は、遠く万葉集の和歌に由来すると伝えられています。万葉人は赤く色づいたカエデの葉を「もみつ蛙手(かえるで)」と呼び、その美しさを愛でていたのでしょう。
 藻岩の森では紅葉系統の「もみつかえるで」に相当するカエデは、ヤマモミジとハウチワカエデの2種が思い当たります。とりわけやや大ぶりで、天狗の持つ団扇に喩えられた9〜11片の切り込んだ形とその色合いの蛙手には、先人ならずとも、われを忘れて仰ぎ観たもみじ狩りのいっときでした。
 ハウチワカエデの気品ある葉と見事な紅葉ぶりに、森の花ごよみより藻岩の森を彩る名木のひとつに推薦したいと思います。
 山鼻川沿いの山麓斜面にて11月1日撮影 天気;晴れ 気温(℃)最高10.8 最低5.9
 
イタヤカエデ(板屋楓)の黄葉

 カエデ科の落葉高木
  下腹斜面から中腹部にかけて根を下ろし、枝を張り、独特の掌状の葉(蛙手)を重ねて茂らせている重厚な姿は、一見してそれと分かるカエデの一種です。イタヤカエデは藻岩山に黄葉前線の到来を告げ、季節の深まる日々黄金色を濃くし晩秋の藻岩の森を彩り、今年も北都に厳しい寒さが迫っていることを告げています。なお、イタヤカエデと並び立って葉の切り込みの浅い変種のアカイタヤが見られましたが、その名に反し、れっきとした黄葉系で、本種のイタヤカエデに負けず劣らずの見事な黄金色に輝いていました。
山鼻川沿いの山麓斜面にて11月1日撮影 天気;晴れ 気温(℃)最高10.8 最低5.9
落ち葉のミニサイエンス 

 紅葉は、木が落葉する前に、それまで働き続けてきた葉の葉緑素(クロロフィル)が退化して色を変える晩秋にみられる季節現象です。紅葉といっても、樹種によって、また日当たり具合によって紅色や黄色や褐色など様々な色合いをみせます。その変色の仕組は、葉の中に生成される色素の働きによるといわれています。今秋の紅葉は、夏以来の異常な高温続きで、葉が傷み鮮やかさに欠けるようです。
  紅色系;葉の中に葉緑素(クロロフィル)にかわって赤い色素(アントニシアン)が合成され、鮮やかな紅葉となる。
 例―ハウチワカエデ、ヤマモミジ、ヤマウルシ
 黄色系;葉緑素が退化すると、それまで隠れていたカロチノドという色素が表にでてくるので黄色が目立つようになる。
例―イタヤカエデ、カツラ、シナノキ、シラカンバ 
 褐色系;葉の中にプロバフェンという色素が生成し、くすんだ褐色を呈する。
 例ーミズナラ、ホオノキ、キタコブシ
 

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