森の花ごよみ in 2012 夏の章
2012.06.11
慈恵会コース登山道
4月の末、山麓から山頂へと木々が萌えて多彩な表情をみせていた藻岩山は、6月を迎えて全山緑一色の装いに衣換えを終えていました。登山道脇の草群れには、夏草のクルマバソウ、コンロンソウのお花畑が続き、その合間にユリやランの仲間が可憐な花姿を見せています。また、華やかな姿の山ガールも往き来し藻岩山の初夏に色を添えていました。
6月4日撮影 天気;晴れ 気温(℃);最高20.0最低9.8
アカネ科の小型多年草
5月半ばから花を咲かせはじめ、登山道脇の至る所に数個の小さな白い花束を立てています。その名の通り、葉が茎に階段状に輪生し、一見して車葉草と分かる姿を見せています。花も花冠の先が十字形に開いた単純なつくりで、あまり目立たない山草の一つです。その欠点を群れて咲くその集団美でカバーし、花粉の運び屋の昆虫を誘い、私たち登山者にもさわやに初夏を感じさせてくれる庶民的な草花でもあります。
撮影日6月4日 天気;晴れ 気温(℃)最高20.0 最低9.8
ラン科の中型多年草
登山道(慈恵会コース)脇の草むらには、数種の野生ランがそれぞれ個性的な花の穂を立て初夏の原生林に色彩を添いています。中でも花姿が千鳥に見立てられたノビネチドリが藻岩山フアンの目を惹きつけています。ルーペで覗くと一つひとつ花は、ラン特有な唇に例えられる複雑な形が観てとれます。ランに限らず野生の花は、少し間を置いてその容姿を楽しみたいものですね。
撮影日6月4日天気;晴れ 気温(℃)最高20.0 最低9.8
ラン科の中型多年草
初夏に茎の上部に黄褐色の小さな唇弁形の花をまばらにつけて立っています。登山道脇の草むらに点在し、個体数が少ない上に花期も短く、めったにお目にかかれない野生ランです。幸運にも視線の先に咲いている2株をなんとかカメラに収めることができました。
撮影日6月4日 天気;晴れ 気温(℃)最高20.0 最低9.8
ラン科の中型多年草(腐生植物)
この夏も倒木のかげに隠れるようにモイワランが唇形の花の房を下げていました。その姿は一見サイハイランとそっくりですが、花茎の根元に葉を着けているか、無いかで見分けられるとされています。
葉を着けないモイワランは、光合成で自活する能力がなく、土壌中の腐植物から必要な養分をとって生活している変わりものだとのことです。モイワランはまた、原生林のような安定した環境の森に発生するとも言われ、藻岩の森を象徴する貴重なランとして見守って行きたいものです。
撮影日 サイハイラン6月4日 モイワラン6月26日
夏の森はつる植物の季節です。林縁には、ヤマブドウ、サルナシ、ツルアジサイ・・・などがつるを絡み合い、葉を重ねて緑の壁をつくっています。林内への風の吹き込みや直射日光を遮る役を果たしマント群落と呼ばれています。その中でマタタビが深緑の地に白いまだら模様を浮かばせて、存在をアッピールしています。前年の花ごよみでも登場させましたが、葉蔭に隠れ咲く花の在りかを昆虫に伝えるために葉を白く染めるのだとの説がありますが、その真偽のほどはともかく、藻岩の森に真夏の到来を告げる鮮やかなシグナルでもあります。
撮影日 7月13日 天気 曇り 気温(℃)最高26.0 最低18.2
マタタビ科のつる性落葉樹
「これは何の花ですか?」撮影中に通りがかりの人から声がかかる。「サルナシです、コクワとも呼ばれています」、「コクワの実はよく知っていますが、花は始めてみました」。サルナシもマタタビと同じように、重り合う葉の蔭に隠れるように5弁の花を下げていて人目につき難いようです。さらに同じ株に雄花と両性花を着けるなど複雑な性形態がみられます。その果実(コクワ)は甘くジューシーで、キウイフルーツの原種にもなっている優れ物です。写真は雄花で、黒紫の葯(やく)もユニークです。
撮影日7月13日
ユキノシタ科のつる性落葉樹
花の気の少ない7月の林縁に、白い花の輪が浮き出ています。その正体は茎から細い気根を出し隣木の幹を這い登り、花の塊を開いたツルアジサイでした。その花は多数の両性花の周りを中性花(飾り花)が囲み一見してアジサイと見られる独特なつくりをしています。同じような飾り花をもつ他のアジサイの仲間は、ほとんどが高木の下に暮らす日蔭者の低木ですが、そんな生活を嫌って明るい環境を求め、つるを身につけるように進化の道をたどってきたのでは?そんな生い立ちに思いをはせて、夏風にそよぐ見事な花輪の群れを見上げた夏の昼下がりでした。
撮影日 7月7日 場所 山頂下の自然観察道 気温(℃) 最高 26.2 最低19.4
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